映画ソムリエを目指す猫

〇〇なときに観たい映画をレビューしており候。

『スタンド・バイ・ミー』 どこかで大人にならなければならない…そう思った時に観たい映画

スタンド・バイ・ミー

公開:1986年8月22日(アメリカ)

上映時間:89分

監督:ロブ・ライナー

脚本:ブルース・A・エヴァンス、レイノルド・ギデオン

製作:ブルース・A・エヴァンス、アンドリュー・シェインマン

音楽:ジャック・ニッチェ

撮影:トーマス・デル・ルース

編集:ロバート・レイトン

出演:ウィル・ウィートン、リヴァー・フェニックスコリー・フェルドマンジェリー・オコンネルキーファー・サザーランド、他

 

あらすじ

12歳のゴーディ、クリス、テディ、バーンの4人組はある日、行方不明になっている少年が30キロ先の森のなかで電車にハネられ、その死体が野ざらしになっている噂を聞く。有名人になりたくて親に内緒でその死体を4人で探しに行くことになるのだが…

 

レビュー目次

 

 

一緒に悪いこともしていた12歳の頃の友人たち

物語は現在作家である主人公が、12歳の頃の親友がケンカに巻き込まれ刺されて死んでしまったニュースを新聞で知ったところから始まる。

12歳の頃の友人は他に2人いて、性格はみな違うのに気の合う4人として親に隠れてやるような真似も一緒にやっていた。

それらを思い出す形で、12歳の4人が「死体探し」をしにいくという本作のボディ部分も始まっていく。

まあ、12歳の子供4人がキャンプ道具を持って親に内緒で30キロ先に向かい、その目的は死体を見つけに行くことで、動機は「有名になれる」からなんだから、見事に子供じみた発想だ。大人からすればこの4人も立派な悪ガキに見えるだろう。

作中でも、カードで賭け事をしたり、夜にはタバコを吸ったり、親父の持っていた酒をくすねてきたり、銃だって持ってきてしまっている。

12歳の子供がタバコを吹かすシーンなんて、いまの日本では教育上問題があるとかで自主規制してしまいそうなものだ。

実際、むかしはよくテレビで放送されていたこの作品も、最近では放送されなくなっている。

もっとも、テディは父親がヒステリックで病院にいたり、クリスもまた家庭環境の悪さから自身もまわりから犯罪をするような子供と見られていたり、ゴーディに至っては優秀だった兄が死んだことで父親に「お前が死ねばよかった」と言われたりと、それぞれ決して家庭が幸福ではないので、彼らの不良行為にも少しは同情したくなるものだ。

また、彼らの兄の世代にはもっと悪いことをする不良グループがいるのだから、それと比べるとまだまだ12歳の彼らは可愛らしくみえるものでもある。

 

子供だからバカができる…それに気づいた12歳

親の前では出来ないことも隠れてし、親に内緒で死体を探しにいくこともし、その旅の途中で馬鹿みたいに騒ぐ真似もした彼ら四人。

テディの言葉を借りれば「子供時代は二度とこない」のだから、いまこそバカをするのだろう。

そしてその言葉からは、彼らの中では子供だからこそバカができて、そのうちそんなマネもできなくなると、心の何処かでわかっているのだとも推測できる。

そのぼんやりとわかっていたものが、本当に死体を見つけてしまい、そこで不良グループとも鉢合わせて悶着になり銃も使ったことで、明瞭になっていくのである。

特に主人公のゴーディは、結局死体を持って帰って有名人になることを拒否した。

「こんなことじゃダメだ」と、そんな真似をしたところで何の意味もないことを悟ったのである。

二日間の死体探しの旅から戻ってくると、たった2日で町が小さく見えたのは、その心の成長によるものだろう。

ただ、それまでの友情が一緒にバカをしていたからこそ成り立っていたものでもあるのだから、そのバカに意味がないと悟ってしまえば、最後のナレーションでもあるようにそれまでの友情も自然と消えていくものである。

 

味方をしてくれた友情はいつまでも残る

自然と消滅していった12歳の友情。

しかし、ゴーディの文才に気づき励ましてくれたクリスと、そのクリスから先生に裏切られた過去を告白されて逆に励ましたゴーディとの友情はいつまでも残るものとなる。

特に二人は、不良グループと鉢合わせた際に最後まで逃げず、銃を使って追い払った仲だ。バーンとテディは逃げ出したのに、最後まで側にいあった二人の絆は硬い。

二日間の旅の後、小学校を卒業して間もなくクリスは町を出て行くが、彼はゴーディの励ましに背中を押されたように勉強して大学に行き弁護士になっている。ゴーディもまたクリスに励まされたとおり、その文才を開花させて作家になっている。

お互いの励ましがお互いの人生に大きく影響しているのだ。

いつまでも馬鹿をやっていてはいけないと悟ったことでこれまでの友情は消えたかもしれないが、その後の人生にも関わるより大きなかけがえのない絆を手に入れれたことは、二人にとってはとても意味のあることだったのではないだろうか。

クリスとは10年以上会っていなかったが、永遠に彼のことは忘れはしまいと心の中で断言するのもそれがためだろう。

 

人間、どこかで大人にならなければならないときがある。それに気づくのは誰かに叱られたり強制されたときではなく、友人(または家族や恋人)に味方してもらえた時こそなのではないかと、この映画を観ていて思えてくるのであった。

 

【参考動画】 


Stand By Me (trailer)