映画ソムリエを目指す猫

〇〇なときに観たい映画をレビューしており候。

『あまくない砂糖の話』 砂糖を知ってダイエットしたい時に観たい映画

『あまくない砂糖の話』

公開:2015年2月(オーストラリア)

上映時間:102分

監督:デイモン・ガモー

脚本:デイモン・ガモー

製作:ニック・バジアス

撮影:ジュード・オーバートン

出演:デイモン・ガモー、スティーブン・フライ、イザベル・ルーカス、ブレントン・スウェイツ、ジェシカ・マーレイ、他

 

あらすじ

人間、砂糖ばかりを60日間食べているとどうなるか?人間は平均一日スプーン40杯もの砂糖を摂取していると知ったガモーは、60日間にわたって一日スプーン40杯分もの砂糖を摂取する実験を自分の肉体で開始。健康体だったカラダは日に日に…

 

レビュー目次

 

 

ドキュメンタリー映画なので

ドキュメンタリー映画であって創作の物語ではないので、作品の趣旨も作り手の狙いも実験した結果もはっきりしており、勝手に解釈する余地なんてあまりないものの、「身近な食品」を題材にしているだけに、紹介したくなった映画だ。

やりたいことはハッキリとしている。

監督が自分の体を使って実験していることは砂糖を多く摂取し続けると人間の体はどうなるかということだ。

脂肪を摂りすぎると肥満になって健康に良くないと言われているが、砂糖は問題ないのか、その疑問に自分の体で答えようとしているのだ。

 

監督が試しているもの

世の中の人々が日頃から食べている加工食品と言うものの中には砂糖がふんだんに使われており、それらを食べている人間は一日平均スプーン40杯分の砂糖を摂取していると言われている。しかも加工食品というのは、シリアルだとかスムージーだとか健康食品と言われているものも含む。

もし砂糖に脂肪のような健康被害がないのであれば、いわゆる健康食品と言われる加工食品を60日間食べ続けても平気でいられはずだろう。

監督のガモーはこのことを試しているのだ。ある意味、健康食品を作っているメーカーにケンカを売っているような挑発的で野心のある取り組みだ。

なお、1日に食べる量はスプーン40杯分の砂糖を目安とするので、計算してみると一日に食べる量はそんなに多くはない。

食べる量が多くはないというのは、裏を返すといわゆる健康食品の中にはそれだけ多くの砂糖が使われているという意味でもある。

 

実験の結果

暴飲暴食するわけでもなく、カロリー量で見ても実験前と大差がない。ついでに実験期間中にガモーは適度な運動もしていた。これらだけを見ると太る要素がまったくない。

しかしだ、それにもかかわらず、実験を続けることで彼は太っていった。

健康食品であるはずなのに、食べた量も多くないはずなのに、彼のお腹は妊娠している恋人と同じくらい膨らんでいったのだ。

他にも肝臓が悪くなったり、精神面では躁鬱を繰り返したりと、体重以外でも変化が出てくる。それも悪い方にだ。

実験には医師たちも協力しているので、その悪くなっていくメカニズムも作中にて解説してくれている。

それらを見ていると、砂糖という身近な食べ物についてとても勉強になると同時に、とても怖ろしく思えてくる。

ほかにも、サイダーを赤ん坊の頃から飲ませた結果18歳で総入れ歯となった高校生への取材や、糖尿病が増えたアボリジニーの話、そして中毒性があることも述べられており、これらを併せると、その怖さはまるでホラーに近かかった。

 

極端だが価値ある実験

実験の結果を総合すると、加工食品にも大量に含まれる砂糖は人体に弊害がある。このように言っているようなものだ。

おまけに加工食品会社は金儲けばかりしているともいうのだから、フード業界の人間が見ればかなりケンカを売っていると思われるだろう。

ガモーのやっていることは少し極端だ。脂肪分やタンパク質に注目して同じような実験をするとどうなるのかも検証しないといけないだろう。サンプルも一人だし、この実験結果から砂糖のすべてを否定することもできない。

ただ、いち消費者としては彼の実験と結果は知っておくべき事実であろう。作中(18歳で総入れ歯のとき)、歯医者よりも教育が必要だというセリフがあるように、全部抜いてしまう処置をしてくれる医者よりも、そんな危うい状態に至らないための知識のほうが価値があるというものだろう。考えてみても、無駄な食べ物を摂取する必要もない、それによって歯医者に通う必要もない、歯をすべて失う必要もない、ないないづくしで無駄なお金を使う必要もないのだ。

ところが怖ろしいのは、ビジネスの目線で言うとなにもしない幸せというものほど邪魔なものはなくて、健康被害があろうが消費し続けてくれないと困る以上はそう仕向ける点だ。メーカーからすると、歯医者も巻き込んで商売にしている可能性だってある。つまりは歯がボロボロになるくらいサイダーを消費させて、ボロボロになったら歯医者を寄こして歯医者を儲けさせる。道徳なんて無視して消費者の肉体を蝕みながらマネーに変えるサイクルを作っていると、こう邪推できるわけだ。

そういった推測も含め、この映画は作品すべてで知識を与えてくれている。

その「知識」にはすごく価値があろう。

 

もっとも、その知識を持って、何を食べるか選ぶのはそいつの勝手だ。この猫の目から見れば、それでも人間は甘いものを食べるだろうし、砂糖の摂取をやめることも、加工食品を明日からすべてやめるということもしないだろう。

こういったドキュメンタリーを見るたびに、人間の欲の深さや、はたまた人間たちの心に隠れた破滅願望を測れる気がして、面白い。

 

ダイエットしたい人には

砂糖ならびにそれを大量に使用するフード業界の危うさも知れたり、ホラーのような怖さがあるなんてことも言ったが、いま現在ダイエットをしようと考えている人からすると、この映画はある意味興味深いであろう。見方を変えると、ダイエットに使えそうなヒントが隠されている映画でもあるのだ。

糖分の摂取で太ってしまうのなら、日頃より糖分をなくせば痩せれるんじゃないか。

そう解釈もできるだろう。

糖分をカットしたダイエットをやるのもやらないもその人の自由であって、結果の責任もその人が負うものだろうが、砂糖と同じく、映画も使いようだということだ。

あしからず。

 

【参考動画】


『あまくない砂糖の話』予告